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5年ぶりの笑顔

かなりディープな話。
重い話や、えぐい話が苦手な方は、読まない方が賢明です(マジ)。



りょうはバツイチである。
りょうと元奥さんは、ネットで知り合った。
初めて会ったその日にH、その7ヶ月後に結婚、そして5年、幸せな日々が続いた。
それは、りょうの人生で初めての、安らかで楽しい日々だった。
例えば2人で実家に帰るとか、会合に出るとかしても、
何故かあっという間に2人っきりになりたくなる。
お互い社交的だったはずなのに、お互い友人関係と会う機会もどんどん減って、
究極の出不精な夫婦になった。
それくらい、2人だけの時間がお互い好きだった。
仕事では、お互い成功に次ぐ成功をおさめ、
りょうは人事異動で新聞に名前が載り、
元奥さんは某企業の最高エリート部門で、
女王と呼ばれ部長ですら逆らえないとんでもない存在になり、
「公的」には成功を欲しいままにしながら、
「私的」には引きこもりのような2人だった。



残念なことに、2人の間のある重大な問題を放置したりょうのせいで、
そしてりょうが3つの会社の4つの部門で仕事するという殺人的な業務量となった後、
まる一週間家に帰れなかったある週の金曜日、彼女は突然静かに爆発した。
不発弾みたいなもので、多分その事件がなければ、爆発しなかっただろう。
ところが、それだけ2人っきりでいる生活を愛し、そんな生活に慣れていた元奥さんは、
ひとりでまる一週間、帰って来ないりょうを毎晩待つ生活で、何かが突然切れた。


その後、元奥さんは、りょうに別れを切り出す。
りょうは、わかっていた、その週の土曜から、元奥さんが何か違う人になったのを。


必死の修復努力もむなしくその後元奥さんは家を出て行き、
その後の必死の修復努力もむなしくある日弁護士事務所から内容証明郵便が。
しかも、要求は離婚とマンションローンへの身勝手な要求ともうひとつの要求と、
1千万円の慰謝料。
当時りょうは、今みたいにww失業者、払えるものではない。

りょうは、完全にぶち切れた。

その話は家裁、調停に場を移し、調停委員なるものを仲介に、両者で争うことに。
常日頃から多くの人に、「敵じゃなくてよかった」とよく言われるりょう、
本気で戦闘態勢に入れば、ほとんど最強だ。
当初元奥さんに極めて同情的だった調停委員2人、
まず1人女性の方がりょうの立場を理解する発言をし始め、
その後モロ女性に同情的な考えの調停委員までもが、りょうに何一つ反論できなくなった。
結果、出てきた裁判官。
これまでの調停でさんざんこちらが主張した話を蒸し返す。
りょう、計算ずくでマジギレ。
にらむ。
本気で怖いらしい。
それまでもの凄く偉そうで横柄だった裁判官、目をそらし急にオロオロとみっともない姿。
結局この調停、事実上りょうの全面勝利。
1千万どころか1円のお金も払わずに、住宅関係等も一切手をつけず、終了した。
向こうはさぞかし、頭に来ただろうなぁ。


しかし、元奥さん、とても変わっている。
毎年父の日母の日に、りょうの両親にプレゼント。
苗字も、実家の名前でなく未だにりょうの苗字(可能らしい)。
そんな状態で、住宅関係ともうひとつの話は、未解決でずっと放置されたまま、
5年近い月日が流れた先週土曜、元奥さんから突然りょうの携帯にメールが入る。
話があるから、時間をつくって欲しい、と。

ついにキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!、と笑ってる場合じゃない、
住宅関係なら断るだけだ、売るのも買い取るのも物理的に不可能。
ということで、今週の木曜、門仲のファミレスで待ち合わせ、
「決戦は木曜日」って気分で向かった。



4年半ぶりに見る彼女は、あまり変わっていなかった。
彼女はもともとりょうのことが大好きで、2人で行った映画やレストランは、
全て記念品を持って帰ってきていた。
毎朝駅まで腕を組んで通勤していた。
週末はほとんど、2人っきりで過ごした。
帰ってこれる頃は、毎晩遅くても必ずご飯をつくって待っていてくれた。
いつも面白いことをして、言って、りょうが腹抱えちゃうほど笑わせてくれた。
そして、結婚してから彼女は驚くほどお洒落になった。
驚くほど、明るく自信に満ち溢れた人になった。
驚くほど、魅力的な女性になった。
でも、そんな彼女が、りょうに牙を剥いた。
どちらが今の彼女だかは、自明の理。

待ち合わせに来た彼女は、当然にこりともしない。
やたらよそよそしい、丁寧な丁寧な敬語。
もともと、彼女は笑顔でないと、かなり暗い顔立ちだ。
りょうは、つとめて普通に振舞う、もちろん丁寧な敬語で。


世間話から始まり、何故か「あの頃」の話へ。
「あのような結末は、私の本意ではなかった」
突然彼女が言う。
やんわりと反論する。
でも、一千万請求してきたのも、あの調停で結論出したのもそちらですよね。
彼女が弁解する。
すごく不思議だ。
牙を剥いた彼女、最後に見たのは調停の最後の場。
やっぱり、暗い顔してこちらを見ようともしない。
こっちも同様だったと思うが。
そんな印象を、5年近くずっと持っていた。
怒っているだろう、憎んでいるだろう、と。

彼女は、りょうと彼女に残る二つの懸案のうち、住宅でないもうひとつの話をする。
それを、解決したい、と言う。
何一つわがままなこと、自分勝手なことを言わず、
こちらの立場、こちらの権利を尊重した形で、話してくれる。
不思議だ。
憎んでないのか?
住宅の話は、それこそ自分まで自己破産するリスクがある話、
先に解決したくないのか?
でも、これはとてもありがたい。
りょうだって、いつまでももうひとつの懸案、放置しておきたくはなかった。
合意する。

ほっとしたような顔をする彼女、
突然、こんなことを言った。

「私たち、夫婦としてはダメだったけど、別れてもいい友達でいられると思った」
そう言って、彼女は泣いた。
「絶対、恨まれてると思った」
そう言って、また泣いた。

確かに、離婚調停の間は、憎んでたかもしれない。
そしてその前、出て行かれてから調停までの3ヶ月間は、絶望的な悲しみにいた。
でも、調停後、しばらくして、そんな気持ちは全てなくなった。
「今は、そんな感情全て忘れてしまっていて、全然憎んでないですよ。」
敬語は崩さずに、でも心から出た言葉を話す。

今度はりょうが、突然彼女に話す。
「今、7月10日から付き合った彼女がいるんです」
「彼女に、話したことがあるんです」
「自分がそれまでの自分の人生で一番幸せだった、5年の話のこと」
そう、憎んだこと、悲しかったことを忘れてしまっても、
幸せだった記憶は、今も鮮明に残っている。
「そんなくらいだから、本当に、憎んだりしてませんよ」
「そして、今、あの5年を超える時代をつくろうと、再チャレンジしてるところです(笑)」

泣いていた彼女が、笑った。
5年ぶりに見る、ひまわりのような笑顔だった。

そう、彼女は笑うと、ひまわりそっくりの笑顔になる。
そしてその笑顔を、太陽に向くひまわりのように、いつも自分に向けてくれていた。
そんなことを思い出し、りょうも泣いてしまう。
ファミレスで泣いたことなんて、それこそ人生で初めてだ。


そして、思い出す。

今同じように、いつも自分の方を向いていて最高の笑顔をくれる、今自分が一番大事な人を。

その笑顔を永遠に、失いたくない。

そして、あの幸せだった5年間を超える時代を、2人で作っていきたい。

そんな決意も新たに、席を立つ。
別れ間際、彼女がまた、ひまわりのような笑顔で言った。

「今日、会えて本当によかった」

そして、ひまわりはくるりと後ろを向いて、駅のホームに吸い込まれていった。
by ryouchanxp | 2006-09-02 11:53 | 恋愛論
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